本記事のポイントまとめ
- レトルト食品を製造する場合は『密封包装食品製造業』の許可が必須
- 許可を取得しても製造方法などにルールがある
- 法を破った製品を販売したい場合は自主回収などの行政処分となる
はじめに
これからレトルト食品の製造販売を始めようと検討している方はいませんか?
密封包装されたレトルトパウチ食品は長期保存ができるものも多く、製造できれば店舗の販路拡大につながり収益も向上すると思います。
しかし実際にレトルト食品の製造にはいろんな決まりがあります。
もしそれを知らずに製造販売してしまうと食中毒事故を起こしたり、保健所からの行政処分が科されることに繋がってしまします。
今回は密封包装食品製造業の許可のなかでも特に取り扱う品目が多い、レトルト食品の製造で注意すべき点を紹介していきます。
本記事はこういった方々にオススメです!
- レトルト食品を製造販売したい方
- レトルト食品の規格基準を知りたい方
- 密封包装食品製造業の注意点を知りたい方
- 食品衛生法改正についてわかりやすく理解したい方
密封包装食品製造業の許可は取得済み?
まずはじめに一般的なレトルト食品を製造する場合は、製造する場所に対して許可を取得する必要があります。
必要な許可は『密封包装食品製造業』という許可が必要になります。
なのでレトルト食品を製造する前にこの許可を取得しておきましょう。
許可の取得方法やどんな許可が対象になるのかについては別の記事で紹介しているのでそちらを参考にしてみてください。
製造する際の注意点
密封包装食品製造業の中でもレトルト品や缶詰品に関しては製造方法から製品が問題ないかなど様々な形で、法律で決められています。
密封包装食品製造業の許可を取得していてこれからレトルト食品の製造を行う場合は必ず製造を開始する前に確認しておきましょう。
規格基準・成分規格(製造した製品に対して守らなければならないこと)
まずはじめに規格基準です。
この規格基準とは完成した製品に対して、食中毒事故を発生させないために決められた基準です。
具体的に言うとレトルト食品の場合は『食品中で発育し得る微生物が陰性であること。』となっています。
つまり、レトルト食品の中に細菌や大腸菌が一切含まれていない状態で封入しなければなりません。
なので一般的にはレトルトパウチ後に加圧殺菌を行う方法が一般的です。
細菌や大腸菌は簡単に食品に混入するので十分に注意する必要があります。
特にカレーなどのレトルト食品は野菜を多く使用しており、その野菜には大量の微生物が付着しているので、
十分に洗浄消毒をしていないとこの規格基準を満たせなくなってしまいます。
なので製造する場合は十分に衛生管理が整った設備で製造する必要があります。
1 容器包装詰加圧加熱殺菌食品(食品(清涼飲料水、食肉製品、鯨肉製品及び魚肉ねり製品を除く。)を気密性のある容器包装に入れ、密封した後、加圧加熱殺菌したものをいう。以下同じ。)の成分規格
引用:厚生労働省
容器包装詰加圧加熱殺菌食品は、当該容器包装詰加圧加熱殺菌食品中で発育し得る微生物が陰性でなければならない。この場合の微生物の試験法は、次のとおりとする。
製造基準(製造する際に守らなければならないこと)
次に製造する際に守らなければならない決まりです。
実はレトルト食品など常温で保存が利く密封包装食品は、一歩間違えれば大規模な食中毒の危険性があります。
なので法律で作り方までしっかりと定められています。
そのルールを『製造基準』と呼ばれています。
実際にどんなルールがあるかをわかりやすく解説すると、、、
レトルト食品の製造基準
- 原材料は高品質のものを使用する
- 原材料は十分に洗浄する
- 製造時に使う保存料や殺菌料は次亜塩素酸ナトリウム以外を添加してはいけない
- レトルトパウチ包装する際はプラスチック容器の縁などを熱融解で封入する
- 加圧加熱殺菌は自己温度計付きの殺菌機で行って温度記録を3年間保管する
- 加圧加熱殺菌は『①中心温度を120℃で4分間加熱』もしくは『②食品中に存在し得る微生物を死滅させられる効力での殺菌』のいずれかの方法で殺菌する
- 加圧加熱殺菌後の製品の冷却は飲用水を常に流し続けながら冷却する
- 使用する器具は殺菌済みで衛生的なものでないとだめ
となっています。
みてわかるとおり、かなり製造には厳しい基準があります。
特に自己温度計付きの殺菌機はかなり費用も掛かる機材なので、相当な設備費用が掛かります。
なので小規模の飲食店でレトルト食品を製造するのはかなり厳しいと思います。
またこれに加えHACCPに基づいた衛生管理が必要となるのでレトルト品を製造する場合はかなり費用が掛かることを確認しておきましょう。
2 容器包装詰加圧加熱殺菌食品の製造基準
引用:厚生労働省
(1) 製造に使用する野菜等の原料は、鮮度その他の品質が良好なものでなければならない。
(2) 製造に使用する野菜等の原料は、必要に応じ十分に洗浄したものでなければならない。
(3) 製造に当たっては、保存料又は殺菌料として用いられる化学的合成品たる添加物(次亜塩素酸ナトリウムを除く。)を使用してはならない。
(4) 缶詰食品又は瓶詰食品以外の容器包装詰加圧加熱殺菌食品の容器包装の封かんは、熱溶融又は巻締めにより行わなければならない。
(5) 製造の際に行う加圧加熱殺菌は、自記温度計を付けた殺菌器で行い、自記温度計によるその記録は3年間保存しなければならない。
(6) 製造の際に行う加圧加熱殺菌は、次の二つの条件に適合するように加圧加熱殺菌の方法を定め、その定めた方法により行わなければならない。
1. 原材料等に由来して当該食品中に存在し、かつ、発育し得る微生物を死滅させるのに十分な効力を有する方法であること。
2. その pH が 4.6 を超え、かつ、水分活性が 0.94 を超える容器包装詰加圧加熱殺菌食品にあっては、中心部の温度を 120°で4分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法であること。
(7) 加圧加熱殺菌後の冷却に水を用いるときは、飲用適の流水で行うか、又は遊離残留塩素を 1.0ppm 以上含む水で絶えず換水をしながら行わなければならない。
(8) 製造に使用する器具は、十分に洗浄したうえ殺菌したものでなければならない。
容器包装の規格(食品を入れる容器に対して守らなければならないこと)
さいごの基準としては食品を入れる容器に対する内容です。
実は長期保存できる密封包装食品は使用している容器から経年劣化などで化学物質が漏出しないようにするために、
使用する容器に対しても細かく規定されています。
その規定をわかりやすく解説すると、、、
容器の規格
- 光と空気を通さない容器を使う
- 水を入れて密封して加圧加熱を行っても、異常がないものを使う
- 水を入れて圧力を加えても水が漏れ出ないものを使う
- 封をした部分を2.3kgの力で引っ張ってもはがれない
- 50cm~100cmの間で製品を落下させても水が漏れ出ない
という基準があります。
しかしここに関しては、市場で流通している業務用のレトルト食品用容器を入手すれば問題なので、
入荷する際にこれを満たしているか、メーカーに問い合わせれば問題ないと思います。
1 容器包装詰加圧加熱殺菌食品(缶詰食品又は瓶詰食品を除く。以下この項において同じ。)の容器包装容器包装詰加圧加熱殺菌食品の容器包装にあっては、次に掲げる条件のすべて(封かんが巻締めにより行われた容器包装にあっては(4)の条件を除く。)を満たすものでなければならない。
引用:厚生労働省
(1) 遮光性を有し、かつ、気体透過性のないものであること。ただし、内容物が油脂の変敗による品質の低下のおそれのない場合にあっては、この限りでない。
(2) 水を満たし密封し、製造における加圧加熱と同一の加圧加熱を行ったとき、破損、変形、着色、変色などを生じないものであること。
(3) 強度等試験法中の耐圧縮試験を行うとき、内容物又は水の漏れがないこと。
(4) 強度等試験法中の熱封かん強度試験を行うとき、測定された値が 23N以上であること。
(5) 強度等試験法中の落下試験を行うとき、内容物又は水の漏れがないこと。ただし、容器包装が小売のために包装されている場合は、当該小売のための包装の状態のまま試験を行うこと
基準を満たしていないとどうなる?
異常ここまでがレトルト食品の製造に関して守らなければいけないポイントでした。
ここまでの解説で「自社では不可能だ」と思い脱落してしまった人も多いのではないでしょうか。
そんな中、ここまで読んでいる人であればおそらく製造する見込みがある方かもしれません。
なのでそういった方に向けて最後、もしこの基準を満たしていなかった場合どうなるのかについて解説します。
もしここで紹介した基準を満たしていない場合は、製品の自主回収や営業停止の処分が下る可能性があります。
特に製品の成分規格に関しては、保健所が抜き打ちで市場にある食品を検査して異常が無いかを検査しているので、
日々の製造には十分気をつけて、自社でも民間の検査機関で定期的に自主検査を行うのが良いと思います。
自主回収で済めば良いですが、もし気がつかないうちにレトルト食品の中にボツリヌス菌など毒性の高い菌が潜んでいたら、
非常に危険な食中毒を引き起こしてしまうので製造には十分すぎるぐらいの注意が必要です。
さいごに
いかがでしたでしょうか?
今回はレトルト食品を製造販売する場合に注意すべき基準を紹介しました。
飲食店事業者でレトルト食品の製造を検討している方はたくさんいますが、この基準を守れるかは十分に検討して製造する必要があります。
またレトルト食品でも冷蔵品などはこの限りではないものもありますが、それでもこれに近い製造基準を満たしておいて、
自己を防ぐ対策は必要かもしれません。
本記事のまとめ
- レトルト食品の製造販売には『密封包装食品製造業』の許可が必要
- レトルト食品の製造には成分規格、製造基準、容器包装基準がある
- 基準を満たしていないと自主回収する事になる
- 小規模事業者には設備投資面で製造が難しい
密封包装食品製造業の許可を取得する前に確認すべき事まとめ
参考資料
厚生労働省:容器包装詰加圧加熱殺菌食品(食品(清涼飲料水、食肉製品、鯨肉製品及び魚肉ねり製品を除く。)を気密性のある容器包装に入れ、密封した後、加圧加熱殺菌したものをいう。以下同じ。)の成分規格
厚生労働省:我が国の容器包装詰加圧加熱殺菌食品の規格基準
厚生労働省:食品、添加物等の規格基準
日本缶詰びん詰レトルト食品協会:缶詰、びん詰、レトルト食品の作り方
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