~まとめ(密封包装食品製造業とは?)~
- 密封包装してある食品で、かつ冷凍・冷蔵での保存をしないものを製造する場合が対象
- 蜂蜜やお酢など一部は密封包装しても密封包装食品製造業の対象外とされている
- 法改正前にあったソース類製造業や缶詰又は瓶詰食品製造業が密封包装食品製造業に統合された形となる
はじめに
令和3年6月1日から食品衛生法が改正・施行されて新しく許可業種として新設される『密封包装食品製造業』についてご存じですか?
今回は密封包装食品製造業についてまだ詳しく把握で来ていない方や、
行政の堅い文字で書かれた資料を読んでも分からない方に向けて、
食品衛生法改正で新しくできる『密封包装食品製造業』についてわかりやすくまとめ解説しました。
まだ『密封包装食品製造業』について把握されていない方や『ソース類製造業』や『缶詰又は瓶詰食品製造業』の許可を既にお持ちの方は、是非確認してください。
本記事を読むメリットのある方
- 密封包装食品製造業について知りたい方
- ジャムやドレッシングなどの密封包装食品を製造販売している方
- ソース類製造業や缶詰又は瓶詰食品製造業の許可を取得している方
- 食品衛生法改正について知りたい方
解説
密封包装食品製造業の定義は?
密封包装食品製造業の対象となる食品の範囲としては、『密封包装されていて、なおかつ常温保存が可能な食品』が対象です。
密封包装することで冷凍・冷蔵保存をしなくても保存期間を伸ばすことができるようになるのですが、
そういった食品は空気がなくても増殖できるボツリヌス菌などの有毒な食中毒を気がづかないうちに増殖させてしまう恐れがあります。
なので食中毒を未然に防ぐために『密封包装されていて、なおかつ常温保存が可能な食品』の製造を許可業種として、保健所の目を製造所に入れる事にしています。
具体的例
- レトルトパウチされたカレー
- ジャムを瓶に詰めて密栓した食品で常温保存ができるもの
- 焼肉のたれを気体透過性の低いボトルに入れて密栓した食品で常温保存できるもの
定義の原文
密封包装食品(レトルトパウチ食品、缶詰、瓶詰その他の容器包装に密封された食品をいう。)であつて、その保存に冷凍又は冷蔵を要しないもの(冷凍又は冷蔵によらない方法により保存した場合においてボツリヌス菌その他の耐熱性の芽胞を形成する嫌気性の細菌が増殖するおそれのないことが明らかな食品であって厚生労働省令で定めるものを除く。)を製造する営業(前各号の営業を除く。)。
引用:厚生労働省
本号は、密封包装食品(レトルトパウチ食品、缶詰、瓶詰その他の容器包装に密封された食品をいう。)であって常温で保存が可能なもの(常温で保存した場合においてボツリヌス菌その他の耐熱性の芽胞を形成する嫌気性の細菌が増殖するおそれのないことが明らかな食品であって厚生労働省令で定めるものを除く。)を製造する営業であって、前各号に該当するものを除くこと。
引用:厚生労働省(食品衛生法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政省令の制定について)
そもそも密封包装とは?
今回対象となるのは『密封包装されていて、なおかつ常温保存が可能な食品』ですが。
そもそも”密封包装”とはどんなものか分かりますか?
令和3年5月時点で国が示している密封包装食品製造業の範囲としては「缶、びん又はレトルトパウチ等の気体透過性の低い容器に内容物を充填し、密栓した食品」とだけしか示されていません。
なので、ジャムを瓶に入れて手で締めただけであっても対象となる可能性が高いです。
実はこれまでは瓶詰ジャムは手締めして脱気など機械的に瓶詰をしていなければ「缶詰又は瓶詰食品製造業」の許可業種の対象外でした。
そこは、厚生労働省でも明確に述べていたのですが、今回法改正で新設された「密封包装食品製造業」に関してはそのような但し書きが書けていないので、このまま法改正が進めば、
今まで許可不要でジャムを作っていた方もこれからは許可が必要になってしまいます。
自宅でジャムの製造販売している方はいらっしゃるのでそういった方々にはかなり影響が出てきます。
また飲食店経営者でスープのパウチ食品を製造している方も今まで許可なくできていた地域もあるかと思いますが、そういった方々も許可が必要になってきます。
具体例(※すべて常温保存できるもの)
- 瓶詰包装食品(手締めも含まれる)
- レトルトパウチ
- 缶詰
- 気体透過性の低いプラスチックボトル(手締めも含まれる)
定義の原文
冷凍又は冷蔵を要しない方法により相当期間保存することを目的として、缶、びん又はレトルトパウチ等の気体透過性の低い容器に内容物を充填し、密栓した食品のうち、公衆衛生上のリスクが高いもの又は過去に重大な食中毒の原因となった食品(pH値が4.6以下又は水分活性が0.94以下の食品を除く。)であって常温保存されるものの製造が対象となる。
引用:厚生労働省(食品衛生法等の一部を改正する法律の政省令等に関する資料)
容器包装に密封され常温で保存が可能なものを製造する営業については本号の営業許可の対象
引用:厚生労働省(食品衛生法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政省令の制定について)
缶詰又はびん詰食品とは、細菌侵入による腐敗、変敗、変質等を防止し、又は空気遮断により酸化を防止するとともに、保存を目的として、金属製又は硝子製若しくは陶磁器製で、通例、缶切り、栓抜器、巻切り等により開く仕掛けとなっている容器に入れられ、かつ、その気密性が一度破壊された場合、そのまま再び容易に復元できないような方法で密封又は密栓された食品をいいます。単に、防湿、携帯等のために、茶筒、錫箔張り容器、七味唐辛子入れ等の容器又は乾浅草海苔、緑茶、唐辛子、胡麻等の乾物を防湿若しくは密封容器に入れた食品は、缶詰又はびん詰食品ということは出来ません。※(昭和31.6.1 衛環発24)
参考:静岡県(33 缶詰又は瓶詰食品製造業について)
対象とならない例外は?
密封包装食品製造業に関しては対象外となる品目も多々あります。
品目によっては許可がいらない場合が3パターンあるので確認が必要です。
- お酢や蜂蜜、小麦粉などボツリヌス菌などの嫌気性食中毒菌の増殖が難しい食品など厚生労働省で決められた品目
- 密封包装食品でも冷凍・冷蔵保存は必要なもの
- 他の業種の対象品目となるもの
一つ目(常温保存しても増菌しない食品)
今回の対象外となる品目の定義として「冷凍又は冷蔵によらない方法により保存した場合においてボツリヌス菌その他の耐熱性の芽胞を形成する嫌気性の細菌が増殖するおそれのないことが明らかな食品であって厚生労働省令で定めるものを除く。」とされています。
簡単に解説するとと、密封されて常温保存していても一部の食材はボツリヌス菌の増殖ができないものがあります。
なのでそういった食材の場合は許可の対象としないようにすることとなっています。
具体的には厚生労働省で決められた食品が該当します。
そのリストを下に示しておきます。
二つ目(冷凍・冷蔵保存が必要な食品)
二つ目は冷凍・冷蔵保存が必要な密封包装食品です。
なのでジャムや焼肉のたれを密封包装しても冷蔵保存が必要であれば対象から外れてきます。
三つ目(他の許可業種に関わる食品)
新しく食品衛生法では許可業種として32業種ありますが、密封包装食品製造業以外の食品に該当する場合は、それらの該当する許可業種の取得が必要で、
密封包装食品製造業の許可は求められません。
具体例
- 醤油→みそ又はしょうゆ製造業
- お菓子→菓子製造業
- 冷凍食品→冷凍食品製造業
- サバ缶→水産製品製造業
定義の原文
令第35条第30号の厚生労働省令で定める食品は、米穀、麦類、雑穀、豆類、粉類(穀粉、豆粉、いも粉等を含む。)、でん粉、乾燥野菜、乾燥きのこ類、乾 燥 パ ン 粉 、 焼 ふ ( 焼 麩 ) 、 節 類 、 削 節 類 、 食 酢 、 は ち み つ 、粉末又は固形の調味料並びに茶、コーヒー、ココア及び麦茶(飲料は除く)とする。
引用:厚生労働省(営業規制の平準化に関する運用について・密封包装食品製造業について)
密封包装食品(レトルトパウチ食品、缶詰、瓶詰その他の容器包装に密封された食品をいう。)であつて、その保存に冷凍又は冷蔵を要しないもの(冷凍又は冷蔵によらない方法により保存した場合においてボツリヌス菌その他の耐熱性の芽胞を形成する嫌気性の細菌が増殖するおそれのないことが明らかな食品であって厚生労働省令で定めるものを除く。)を製造する営業(前各号の営業を除く。)。
引用:厚生労働省
本号は、密封包装食品(レトルトパウチ食品、缶詰、瓶詰その他の容器包装に密封された食品をいう。)であって常温で保存が可能なもの(常温で保存した場合においてボツリヌス菌その他の耐熱性の芽胞を形成する嫌気性の細菌が増殖するおそれのないことが明らかな食品であって厚生労働省令で定めるものを除く。)を製造する営業であって、前各号に該当するものを除くこと。
引用:厚生労働省(食品衛生法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政省令の制定について)
これまでソース類製造業で対象だった品目はすべて密封包装食品製造業の対象?
ソース類製造業をこれまで取得していた方は、基本的に今回の密封包装食品製造業に該当してくるのですが、
冷蔵保存などの商品に関しては密封包装食品製造業の対象ではなくなってくるので、許可申請ではなく届出が必要です。
定義の原文
従来のソース類製造業の対象のうち、容器包装に密封され常温で保存が可能なものを製造する施設については本号の対象とし、ソース類製造業は削除する。
引用:厚生労働省
本号の創設により、旧第 27 号のソース類製造業の営業許可の対象とされていた食品のうち、容器包装に密封され常温で保存が可能なものを製造する営業については本号の営業許可の対象となり、ソース類製造業は廃止されること。
引用:厚生労働省
密封包装食品製造業の対象とならないものを製造している場合は届出が必要
今回の密封包装食品製造業に該当しない食品の製造を行う場合は、許可申請を保健所に行う必要ありませんが、届出を行う必要があります。
届出の方法については下記の記事を参考にしてください。
【解説】食品衛生申請等システムの届出の方法をわかりやすくまとめ | 肥前正宗 食品・グルメ情報サイト (hizenmasamune.com)
密封包装食品製造業の許可取得に必要な設備は?
密封包装食品製造業の許可が必要な場合は、保健所での申請と調査が必要になってきます。
許可の取得には必要な設備が備わっている必要があります。
具体的な設備の内容については下記のリンクを参考にしてください。
さいごに
いかがでしたでしょうか?
今回の食品衛生法改正では、密封包装食品製造業に関しては
人によっては今まで許可がいらなかったのに許可が必要になって保健所への申請が必要になった方もいるのではないでしょうか。
密封包装食品製造業の許可対象外の品目は随時更新されているみたいなので、そこも注目して行く必要があります。
厚生労働省の品目が更新され次第本記事も更新します。
また保健所への申請を初めてする方に向けて申請の流れをまとめた記事があるのでそちらも参考にしてください。(飲食店向けですが基本的には同じ流れです)
【解説】はじめて飲食店を開業する人が失敗しないための手続きまとめ | 肥前正宗 食品・グルメ情報サイト (hizenmasamune.com)
※ちなみに画像は私の大好きなカフェのハッシュドポテトです。(本サイトでも別記事で紹介しています)
参考資料
厚生労働省(食品衛生法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政省令の制定について):000759439.pdf (mhlw.go.jp)
厚生労働省(密封包装食品製造業についてスライド資料):資料2-0 表紙 (mhlw.go.jp)
厚生労働省(食品衛生法等の一部を改正する法律の政省令等に関する資料):食品衛生法等の一部を改正する法律の政省令案に関する説明会(地方行政担当者会議) (mhlw.go.jp)
新潟県(密封包装食品製造業についてスライド資料):30mippu.pdf (niigata.lg.jp)
静岡県庁(缶詰又は瓶詰食品製造業について):untitled (pref.shizuoka.jp)
当サイト:
【解説】食品衛生申請等システムの届出の方法をわかりやすくまとめ | 肥前正宗 食品・グルメ情報サイト (hizenmasamune.com)
【解説】食品衛生法改正後の共通施設基準をわかりやすく簡単まとめ | 肥前正宗 食品・グルメ情報サイト (hizenmasamune.com)
【解説】はじめて飲食店を開業する人が失敗しないための手続きまとめ | 肥前正宗 食品・グルメ情報サイト (hizenmasamune.com)
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