食品の規格基準で加熱時間や温度の規定がありますが、その規定を守るために理論値としてD値・Z値・F値という値を用いますが、ここではそれらについて簡単に解説していきます。
ポイント
- D値:生菌数を10分の1に減らすために必要な加熱時間(例:D値=10分など)
- Z値:D値の時間を10分の1にするために必要な追加温度(一般細菌の場合 Z値=5~8℃)
- F値:決められた一定温度で細菌を死滅させるのに必要な加熱時間(例:レトルト食品の殺菌条件が120℃、4分間なので F値=4分)
解説
レトルト食品や清涼飲料水などの製造基準には法律で「摂氏○℃で△分間加熱殺菌するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法」と規定される加熱殺菌条件が食品衛生法等にあります。
しかし、この”同等以上の殺菌効果”をどのように計算するか分からない方がほとんどです。
この計算方法を調べるとD値・Z値・F値というワードが出てきますがこれらが果たして何を示しているのかを紹介していきます。
D値
まずD値から説明すると、
D値はある一定の温度において生菌数を10分の1に減らすのに掛かる時間を指します。
つまり、ある温度で生菌数を10000から1000に減らすのに掛かった時間が10分の場合は、D=10分となります。
よってD値が10分の場合で、生菌数が10000個のとき、それぞれの目標とする菌数までに減らすのに必要な時間は以下のように計算されます。
D値=10分、初めの生菌数が10000個の場合
生菌数(初め10000個) | 加熱時間 | 計算方法 |
1000個まで減らす場合 (1/10) | 10分 (D値1回分) | 10000個の菌数を1/10にあたる1000個まで減らすのにかかる時間はD値1回分のため 10分×1=10分 |
100個まで減らす場合 (1/100) | 20分 (D値2回分) | 10000個の菌数を1/100にあたる100個まで減らすのに掛かる時間はD値2回分のため 10分×2=20分 |
これを見て分かるとおり、最初からその食品に生息する菌数が多ければ多いほど殺菌に要する時間が長くなります。
Z値
次にZ値について解説していきます。
Z値は「D値の時間を10分の1にするために必要な追加すべき加熱温度」です。
つまり先に紹介したD値を10分から1分に短縮する際に、必要となる追加すべき加熱の温度量という意味になります。
温度の上昇に伴い、殺菌能力は上がるためこのような値が定められています。
またZ値は菌の種類ごとに値が決まっています。
(例: 一般細菌 Z値=5~8℃ / 耐熱性芽胞細菌 Z値=7~11℃)
例えば60℃30分で加熱殺菌できる菌の場合において、その菌がZ値=5℃のとき、以下のような加熱時間(D値)の推移になります。
加熱温度 | 加熱時間 | 計算式 |
60℃ | 30分 | – |
65℃ | 3分(180秒) | +5℃⇒Z値1回分 30分×1/10=3分 |
70℃ | 18秒 | 60℃+5℃+5℃⇒Z値2回分 30分(1800秒)×1/10×1/10=18秒 |
75℃ | 1.8秒 | 60℃+5℃+5℃+5℃⇒Z値3回分 30分(1800秒)×1/10×1/10×1/10=1.8秒 |
実際自分が取り扱う食品に存在しうる食中毒菌をターゲットにしてその菌固有のZ値を基準にD値を算出していきます。
F値
次にF値ですが、こちらは「基準温度で一定の細菌を死滅させるのに要する加熱時間」を表します。
例えば法律で定められているレトルト食品の加熱殺菌条件は、ボツリヌス菌を死滅させる加熱条件である中心温度120℃4分と決められています。
この場合の基準温度が120℃で、F値が4になります。
なのでレトルト食品の加熱殺菌を行う場合はこのF=4を下回らないように守る必要があります。
ここでもし基準温度をかえてF=4と同じ効力の殺菌効果を維持したい場合は以下のような計算式になります。(Z値=10℃の場合)
加熱温度 | 加熱時間 | 計算式 |
110℃ | 40分 | 4分×10 |
120℃ | 4分 | 基準となる加熱殺菌条件 |
130℃ | 24秒 | 4分かkる1/10 |
Z値が分かっていれば基準温度を変えた場合にどれくらい加熱時間をかければ良いかが以上のようにわかります。
また以下のような温度で殺菌を行う場合も計算で必要な加熱時間を算出することができます。
(問題)
Z値=10℃、120℃4分(F=4)の加熱殺菌が必要な細菌を、
110℃で10分間加熱した後、F=4を維持するために120℃で残りを加熱殺菌する際に必要な加熱時間は?
(答え)
①110℃でF=4と同じ殺菌をする場合は4分×10=40分の加熱が必要
②今回110℃で10分だけ加熱するので、40分ー10分=30分つまり、110℃30分の加熱殺菌と同等の加熱を120℃で行う事となる。
③残りの120℃で殺菌すべき時間はもともと120℃で4分必要だった時間に対して4分×30分/40分 分を加熱すれば良いので、120℃で残りを殺菌すべき時間は3分間となる。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回紹介したD値・Z値・F値はかなり難しい内容になっております。
なので文章での解説がとても難しかったのでわかりにくい表現があったかと思います。
ただ本稿が少しでもD値・Z値・F値の理解に繋がる手助けになれば幸いです。
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参考資料
滋賀県食品安全監視センター:※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ (shiga.lg.jp)
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