本記事のポイントまとめ(冷凍食品製造業の許可に必要な設備は?)
- 冷凍食品製造業の許可が必要な場合と各種製造業許可で製造可能な場合の2パターンある
- 菓子の冷凍食品の製造のみ→菓子製造業の許可設備に冷凍用の設備を備えれば可能
- めんの冷凍食品の製造のみ→めん類製造業の許可設備に冷凍用の設備を備える
- いろんなジャンルの冷凍食品を製造する場合→冷凍食品製造業の許可が必要
- 飲食店営業許可事業者が冷凍食品を製造する場合→冷凍食品製造業の許可が必要
はじめに
これからインターネットや自店舗で冷凍食品の製造販売を始めようと考えている方はいませんか?
コロナの影響で自宅で冷凍餃子や冷凍パンを調理して食べる人がかなり増えています。
しかし冷凍食品の製造販売には様々な許可が必要になりますが、どうしたら許可を取得できるのかが分からない方も多いのでは無いでしょうか?
特に令和3年6月1日から食品衛生法が改正され施設基準や許可の対象の範囲も大きく変わっており、どのような許可が必要か知らない方も多いと思います。
だからといって何度も保健所に問い合わせて必要な設備内容を確認するのも面倒、、、
今回はそんな方に冷凍食品製造業の許可を取得する上で必要な設備(施設基準)について
わかりやすく解説していきます。
※今回紹介する内容は全て厚生労働省の資料や各都道府県の県庁資料をもとに作成しています。
参考とした資料は記事のさいごにリンクを貼っています。
本記事を読むメリットのある方
- インターネットで冷凍食品を販売したい方
- 冷凍食品製造業の許可を取得したい方
- 冷凍食品の製造販売で必要な許可を知りたい方
- 食品衛生法改正後の冷凍食品製造業を知りたい方
解説
令和3年6月1日の食品衛生法の改正で、冷凍食品の製造販売に必要な許可の考え方が大きく変わりました。
これまでは冷凍食品を製造する場合は必ず『食品の冷凍冷蔵業(現在の”冷凍食品製造業”)』の許可が必要でした。
しかし、法改正で各種製造業の許可を持っている事業者はその許可業種の品目の冷凍品であれば、許可の範囲内で製造販売ができるようになりました。
具体的にいうと、これまではパンを製造販売する事業者が冷凍パンの製造販売も行う場合は『菓子製造業』と『食品の冷凍冷蔵業』の両方の許可が必要でした。
しかし、法改正後は、パンの冷凍品の販売を行う場合であっても、『菓子製造業』で製造が可能となりました。
ただここで注意が必要なのは、菓子製造業者が冷凍品を製造する場合は、菓子の冷凍品のみしか製造できません。
また製造業ではない、飲食店営業においては冷凍用の追加の基準を設けていても冷凍食品の製造販売はできません。
→飲食店で冷凍食品を製造販売できるか?冷凍食品の製造で注意すべき事まとめ
もし、冷凍餃子や冷凍麺などそうざいや麺の冷凍品の製造も行う場合は『冷凍食品製造業』の許可取得が必須となってきますので注意が必要です。
また『菓子製造業』などの許可だけで冷凍品を製造する場合と、『冷凍食品製造業』の許可を取得して製造販売する場合とで、必要な設備が多少異なってくるので注意が必要です。
なので今回はそれぞれで必要な基準を紹介していきます。
『冷凍食品製造業』の許可を取得して製造販売する場合
冷凍食品製造業の許可を取得する場合は、製造用のシンクや手洗い設備など様々な基準を満たす必要があります。
具体的には全業種が満たさないといけない『共通基準』と各業種ごとに特別に必要な設備『特化基準』の両方をクリアしている必要があります。
それぞれについて次の項目から解説していきます。
共通基準
まず冷凍食品製造業に限らず全ての許可業種においてはこの共通基準をクリアしている必要があります。
この共通基準は全許可業種が満たしていないとダメな基準になります。
ちなみに飲食店営業では基本的にこの共通基準を満たせば許可が下りるようになっています。
なので、『最低でも飲食店営業許可を下ろせるレベルの基準は満たさなければならない』という意味になります。
これはどんなに大きな加工工場でも田舎のおばあちゃんが経営する飲食店でも共通して必要となります。
ここの共通基準については本サイトの別記事でもまとめてわかりやすく解説しているのでそちらを参考にしてみてください。→共通施設基準のまとめ記事
簡単に共通基準のポイントをいくつか紹介しておきます
注意すべきポイント
- 自宅での営業は不可(自宅でする場合はしっかり壁などで区画する必要がある)
- 手洗い設備とシンクがそれぞれ必要
- 手洗い設備は自動式やレバー式の蛇口栓が必要
- 従業員が利用するトイレとトイレ専用の手洗い設備が必要
- 床や壁は水が染みこまない材質(不浸透性材質)にする
- 更衣室や行為できる場所の確保
- 包装する専用の場所の確保(製造と同じ調理台は使用不可)
- 掃除道具と掃除のマニュアルの作成
特に今回の法改正で注目されているのは手洗い設備が厳しくなった点です。
従来のハンドル式の蛇口栓では手を洗った後に蛇口をひねることで再び手が汚れるとの考えから
レバー式や自動式など手以外で栓を止められるものが必要となりました。
シンクの大きさは自治体によってはサイズ規定も設けている場合があるので最終的には保健所に確認しておきましょう!
特化基準
先ほど紹介した共通基準の他に全32業種にはそれぞれ個別の基準(特化基準)が追加で設けられています。
魚を捌くための専用の基準があればチーズの製造に専用の基準があったりと様々です。
今回は冷凍食品製造業の施設基準の紹介なので冷凍食品製造業専用の特化基準を紹介します。
ここで紹介する基準と上で紹介した共通基準の両方満たして初めて許可は取得できる事となります。
具体的な必要な設備は下にまとめました。
冷凍食品製造業の特化基準
- 部屋ごとに作業区分が変わる場合は物理的な区画
- 冷凍食品用の原材料保管庫(冷蔵庫、冷凍庫)
- 冷凍食品用の製造場所(調理台)
- 冷凍食品を包装する包装場所(包装台)
- 商品を保管する専用の冷凍庫
- ー15℃以下を保てる冷凍庫を備える
- 製品を冷却する放冷設備や殺菌設備、加熱設備
ここで紹介した基準を完全に満たせば許可の取得はできます。
ここで紹介した基準は厚生労働省が定めており、各都道府県がこれを元に運用しています。
なので全国共通の基準ですが、この条文のとらえ方は自治体によって多少のずれがあるので、最終的にはそのズレがどれほどあるかを保健所で確認しておきましょう。
【二十六 令第三十五条第二十七号の冷凍食品製造業】
イ 原材料の保管及び前処理並びに製品の製造、冷凍、包装及び保管をするための室又は場所を有すること。なお、室を場所とする場合にあつては、作業区分に応じて区画されていること。
ロ 原材料の保管をする室又は場所に冷蔵又は冷凍設備を有すること。
ハ 製品の製造をする室又は場所は、製造する品目に応じて、加熱、殺菌、放冷及び冷却に必要な設備を有すること。
ニ 製品が摂氏マイナス十五度以下となるよう管理することのできる機能を備える冷凍室及び保管室を有すること。
引用:厚生労働省
『菓子製造業』などの許可だけで冷凍品を製造する場合
この場合は、前の項目で紹介したとおり各種製造業の許可に設備を追加すれば『冷凍食品製造業』の許可を改めて取得する必要はなくなります。
そのかわり、取得した製造業の範囲の冷凍品しか製造できません。
(例 菓子製造業で冷凍食品を作る場合は菓子の冷凍品のみ製造できる)
その場合に必要になる許可設備については別の記事で紹介してるのでそちらを確認してください。
→製造業の許可を取得している事業者が冷凍食品を製造する場合に必要な設備について
リンク先の中段あたりにあるので是非確認してみてください!(※菓子製造業者向けに作成していますがどの製造業者でも同様の追加基準が必要になるので安心してください。)
簡単に必要な設備について紹介すると、各種製造業に必要な設備に加えて主に下の基準を満たす必要があります。
- 冷凍食品用の原材料保管庫(冷蔵庫、冷凍庫)
- 冷凍食品用の製造場所(調理台)
- 冷凍食品を包装する包装場所(包装台)
- 商品を保管する専用の冷凍庫
- ー15℃以下を保てる冷凍庫を備える
- 製品を冷却する放冷設備があること
さいごに
いかがでしたか?
今回は法改正後の冷凍食品製造業の施設基準について紹介しました。
自治体によっては今までより厳しくなったり緩くなったりとなどさまざまかと思います。
しかし法改正で今までできなかった事もずいぶんできるようになっているので、この際冷凍食品の製造を検討してみるのも良いかもしれません。
また今回紹介した資料は厚生労働省で施行されている施設基準で、基本的に全国一律での運用を求められているのですが。
都道府県によってはより厳しく条文の解釈を行い、基準を定めていたりする可能性があるので、最終的には管轄する保健所に確認をしましょう。
また冷凍食品を製造する場合は製造した商品に対して成分規格などその他の厳しい基準もあるので許可を取得したらこちらも確認しておきましょう。
冷凍食品に関するまとめ記事はこちら
根拠資料
山口県(厚生労働省で定める施設基準):046583_f2.pdf (yamaguchi.lg.jp)
厚生労働省(資料2 施設基準に係る厚生労働省令案の解説):PowerPoint プレゼンテーション (mhlw.go.jp)
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